ヨーロッパでお茶は黄金のように珍重されていたため、西洋人にとって中国茶はかつて「東洋の神秘」的存在でした。今日、お茶を飲むことは世界的な習慣として定着しました。世界中で愛飲されているお茶の定番が中国茶だと云えるでしょう。
中国ではなぜ昔から料理と一緒にお茶が供されるのか?
中国料理には油を使ったものが多いということがまず挙がられます。 食事と一緒にお茶を飲むのがベストと旅行者にすすめる理由はそこにあります。特に消化機能の弱い人にとって脂っこい料理には最適で、実際に中国茶は中国料理との相性がピッタリで食事の際に口内をリフレッシュしてくれます。
マカオの広東料理店の中にはお茶専用のメニューを用意している店もあります。一部の高級レストランにはティーソムリエがいて、ゲストに最高品質のお茶をすすめ、食事に最適なお茶を選んでくれます。
中国茶の種類
ぜひお試しいただきたい最高種のお茶をいくつかご紹介します。
このお茶にはその発酵の過程で醸し出される独特の芳香があります。中国茶を知らなかった方でも、ウーロン茶に魅了され、また飲みたくなるのです。
中国緑茶の代表がこのロンジン茶で、上海に近い杭州産のものが特に有名です。乾燥した平たい茶葉の形が特徴で、一目で他のお茶と見分けられます。そのほのかな香りと風味がお口の中をさわやかにしてくれます。
中国雲南省特産の黒い発酵茶で、特に広東で愛飲されています。食後に限らず体の脂肪を取り除いてリラックス効果を高める働きがあります。カマオの人々が食事の際、特に飲茶を食べた後によくプーアール茶を注文するのはそのためです。
中国武威の特産でホンベイ(烘焙)と呼ばれる工程を経て製造されるお茶です。深い焙煎から生まれるウーイー茶の風味が料理の味を引き立て、初めて口にされる方をも魅了します。
その名のとおり黒いお茶です。さまざまな茶葉をブレンドする英国のブラックティー(紅茶)と異なり、中国のブラックティー(黒茶=ヘイチャー)はその茶葉自体の風味を楽しみます。産地ごとに特徴が異なる黒茶をお試しください。一般的には幅広い人気があり入手しやすいキームン黒茶がベストと云われています。
広東料理の定番──飲茶
広東料理の定番ディムサム(点心)が飲茶で、人々はこの飲茶を広東料理の華と呼んでいます。マカオ市民の多くが軽い朝食や昼食に、そして晩餐の料理のひとつとしても食しています。マカオではこの点心をヤムチャ(飲茶)と呼んでいます。マカオ滞在中にこの飲茶をぜひ昼食で召し上がってみてください。
エビと豚肉が詰まった腰のある半透明の皮で包んだ飲茶です。大きさもさることながら、噛んだ時にその身からにじみ出る甘いエビの汁に驚かされます。このエビ餃子は最も人気のある広東風飲茶のひとつで、旅行者には生涯忘れられない味となるでしょう。
玉子を使った薄い練り粉の皮で豚肉とエビを包んだ飲茶です。高価なシウマイ(焼売)には、魚やカニの卵、ツバメの巣が使われます。シウマイには南部の広東風と北部の北京風がありますが、マカオでは広東風が食されています。
これは上海風の飲茶です。薄皮包の中には肉汁たっぷりの豚のひき肉が詰まっています。まずスプーンの上に飲茶をのせ、箸(はし)の先で包を開け、中の肉汁をすすり、それから飲茶の中身をゆっくり楽しみます。お好みで刻みショウガやお酢を加えると風味が増します。
コラーゲンたっぷりのニワトリの足(鶏足)を広東風ソースで煮込んだ飲茶で、近年は女性旅行者の人気を集めています。
もち米などすべてを蓮の葉で包んだ鶏料理です。蓮の葉ならではの香りを楽しめる方なら大好きになるはずです。
牛のひき肉を団子にして蒸します。コリアンダーや乾燥オレンジの皮、ゴマ油のコンビネーションがこの牛肉団子に格別な風味を与えています。
炒めた豚肉や小ぶりの乾燥エビ、干しシイタケをすり潰して大根と混ぜ合わせ蒸すのがこの飲茶の特徴で、最後に軽く直火焼きして完成です。
蒸した厚皮のバン(パン)に砂糖醤油で煮込んだ甘い豚肉を詰めた飲茶です。他の飲茶より大きいので、満腹で旅行したい方には人気の一品です。
たっぷりの油で揚げた表面が香ばしいエビ餃子です。飲茶に分類されていますが、レストランによっては一品料理に含まれています。
スープに入れて供される大きな飲茶です。十年ものの鶏の骨を煮込んだスープとともに食される高級飲茶料理です。マカオではとても人気のヘルシーフードで、濃厚な風味が特徴のスープです。
豚のひき肉とチャイブ(アサツキ)のみじん切りを包む飲茶です。アサツキならではの風味が脂っこさを抑えるので他の飲茶よりさっぱりしています。
醤油とガーリックを混ぜたソースに漬け込み蒸したポークリブを味わう飲茶料理です。マリネした甘口のソースの味が繊細な豚肉の風味と絶妙のハーモニーを奏でます。
お米を細かくひいた米粉を薄く広げて蒸します。この薄皮にエビや肉、さまざまな野菜を入れて包みます。醤油を添えて供されることが多く、表面の皮の消化がいいことから、マカオでは朝食の定番となっています。調理法もさまざまで各レストランがオリジナルのレシピで提供しているようです。
野菜や肉を小麦粉で作った皮で幾重にも巻いた飲茶をたっぷりの油で揚げた料理です。ベトナム料理店のメニューで見かける春巻のひとつ。外はパリッとしていますが中身の触感はやわらかく、風味と舌ざわりのバランスが最高の一品です。なお、特筆すべき最近の傾向として、中に詰める肉をエビに代える店が増えているとのことです。
本格的広東料理を堪能
もし飲茶が広東料理では一種のアペタイザー(前菜)というのであれば、メイン料理を食してみようではありませんか。食彩の世界に分け入り、広東料理の神髄に触れてみてはいかがでしょう。実は広東料理の基本構成は驚くほど西洋料理に似ているのです。
食事はまずスープから始まることが多く、その直後あるいは同時に前菜が供され、メイン料理へと続きます。調理のスタイルや食材によって異なりますが、バーベキューやツバメの巣、アワビ、シーフード、肉類、またはさまざまな季節の野菜とともに供されます。
広東風に蒸した魚です。軽く調理した魚の上に熱した油をかけて魚の表面をカリッとさせてから特製の淡口醤油を一振りしたら完成です。この特製醤油で魚の身を味わうのですが、その醤油に含まれている新鮮な新(春)玉ねぎの風味がまた格別です。
強火で炒めたスパイスの効いたカニ料理です。大きなベトナム産のノコギリガザミ(マッドクラブ=泥蟹)を使うのが最高とされています。カニを入れた水槽を用意しているレストランもあり、自分で選んだカニを調理してもらうこともできます。
ゴールドシュリンプというエビを使います。エビの卵(えびこ)を入れた衣用生地で黄金色のエビをたっぷりの油で揚げたエビフライです。えびこが衣に使われているのが特徴で、えびこならではの風味と舌ざわりが織りなす珍味を堪能できます。
最高級広東海鮮料理のひとつです。アワビ(鮑)の料理には必ず干しアワビが使われますが、アワビは頭(とう)という単位で大きさを計り選びます。最大のアワビを「1頭」と表記しますが滅多に手に入りません。「2頭」は「1頭」の半分の大きさになります。通常レストランは「12頭」から「24頭」、ほぼこどもの手のひらサイズのアワビを仕入れています。アワビ料理の名称はアワビの産地や使うソースの種類、そのレストランの嗜好などによっても異なるので注文するときは気をつけましょう。
広東料理ではアワビやツバメの巣同様ナマコ(海鼠)も高級食材とされています。朝鮮人参の根と同じく、ナマコにはサポニンが含まれており、疲労回復に役立つ栄養が摂取できる健康的な食材として広く認知されています。
たっぷりの油でカリッと香ばしく揚げた広東風フライドチキン。茹でた鶏をスターチシロップ(水あめ)に漬け込み、その後沸騰した油をかけて皮をカリカリのきつね色にして完成です。鶏料理の好きな方には外せない一品です。
酢豚という料理は時代を超えて愛されています。ソースは食欲をそそり食材の色彩も豊かで、とても主張の強い個性的な料理です。
北京ダック同様、このガチョウのローストも中国を代表する家禽・鶏肉料理です。カリッと香ばしいフライドチキンのときのように茹でたガチョウを水あめに漬け込みます。その後はまず、薪の火で焼きますが、最大3回までソースを塗って焼きを繰り返します。この手間が十分漬け込んだガチョウの肉に想像を絶する舌ざわりと味わいをもたらします。
本場中国のチャーハン(焼飯)は中国料理の芸術品と云えます。ご飯粒の表面を覆う玉子、細かく角切りされた肉と野菜が奏でるアンサンブルをご賞味ください。
串刺しポークのバーベキューです。直火で焼いてから麦芽水あめを塗って照りを出し、調理用トーチを使ってもう一度温めて供します。甘みのあるスモーキーな味わいのシンプルな豚肉料理です。
麺をさまざまな野菜と一緒に入れて強火で素早く炒め醤油で味付けしたのがチャーメン(炒麺)で、合わせる素材を問わず食欲をそそる麺料理です。類似の料理に薄切り牛肉とビーフン(米麺)の炒麺があります。
広東風肉料理を代表する一品です。生後2~6週間の子豚を丸焼きにします。脂肪のない肉とパリッと香ばしく焼いた皮が特徴です。クリスピーな皮しか食べず、肉には目もくれない方もいます。このバーベキュー料理にはバリエーションが多く、レストランによって見せ方も異なります。
食事のゴール地点で待っているのがデザートです。マカオのデザート文化の歴史は長く、その種類の豊富さに驚くことでしょう。
デザートを味わうことだけを目的にマカオを訪れる旅行者がいます。恋に落ちることを恐れずマカオでのスイーツ三昧を満喫してください。
ご参考までに申し上げます。広東料理店の中にはデザートを点心(ディムサム)メニューに載せているレストランがあります。ご希望のデザートが見当たらないときはウェイターに確認しましょう。
一般的にはサゴ(サゴ椰子のでんぷん)と呼ばれています。ココナツミルクを加えたマンゴージュースにグレープフルーツの果肉やさまざまなフルーツのスライスを添えてスプーンで食べるデザートです。まろやかさを強調する店はココナツミルクを多めに入れ、さわやかさを強調したい店ではパイナップルのようなサワー感のあるフルーツを加えるなどレストランによって趣きもさまざまです。
蒸したバン(パン)の中にカスタードクリームを詰めた飲茶スタイルのデザートです。最近ではカスタードにミルククリームを加えるなど高級感を高めています。
固くなったカボチャをすり潰して粘り気のある団子にしたものです。古いカボチャの甘さともち米のような歯ざわりがどこかホッとするような味わいです。
あまり知られていない豆腐のデザートです。砕いたアーモンドを使った甘いソースを上にかけたやわらかい豆腐で、なめらかな舌ざわりとアーモンドの風味が見事なハーモニーを奏でます。
旅行者にもお馴染みのミルクプディングです。牛乳プリンのようですが温めたミルクに近いと思います。なめらかな舌ざわりと牛乳ならではの風味が多くの人々をとりこにしています。